体調が悪くなれば、私は入院してもいいと思っている。病院のベッドも案外快適で、シーツを交換してもらった日はとても気持ちがいい。それでも、家に帰って自分の薄い布団に寝転がると、「やっぱりここが一番いい」と思う。

 私にとって「地域で暮らす」ということは、病院に二度と戻らないことではない。「うー、入院しそう」とつぶやける仲間がいて、退院すれば「お勤めご苦労さん」と飲みに行く。仲間が入院すれば寂しいし、帰ってきて久しぶりに顔を見れば嬉しい。そうやって、揺れながら暮らしている。

 では、危機のとき、私たちは何を頼りにその人の意思を知ることができるのだろう。

 私は、「一番言いたいことを、一番最初に言えるわけではない」と思っている。日々の関わりのなかで、その人が何を大切にし、何に価値を置いて生きているのかを教えてもらう。その積み重ねがあるからこそ、危機のときにも、その人の言葉や行動の向こう側にあるものを一緒に考え、ときには腰を据えて関わることができるのではないだろうか。

 「城」とは何だろう。家かもしれない。人との関係かもしれない。私にとっては、地域そのものなのかもしれない。今のところ私は、「自分の主体が通用する世界」と考えている。

 そこで、専門職の方々とも一緒に考えてみたい。本人が一番言いたいことを、一番最初に言えるとは限らないとき、専門職は、どのようにその人が大切にしていることを知り、ともに意思を考えていけるのだろう。そして、支援する側にとっての「安全」と、本人にとっての「自分の主体が通用すること」がぶつかったとき、専門職は何を大切にすればよいのだろう。反対に、当事者はどのように専門職と向き合い、関係をつくっていけばよいのだろう。 地域移行とは、揺れない人になることでも、病院を必要としない人になることでもない。それぞれの「城」で、揺れながら暮らしていくことについて、当日はそれぞれの立場から対話してみたい。

演者ご略歴

川村 有紀 先生

オープンスペースぽかぽか 代表

【学歴】

2011年 東北福祉大学総合福祉学部 通信教育部 社会福祉学科 卒業

【職歴】

2011年 社会福祉法人あおぞら 相談支援事業所てれんこ 入職

2015年 尚絅学院中学高等学校礼拝オルガニスト(〜現在)

2019年 尚絅学院中学高等学校礼拝 生徒オルガニスト指導(〜現在)

2020年 NPO法人みやぎ「こうでねいと」 入職

      グループホーム 生活支援員・世話人(〜2026年6月まで)

2021年 柴田町スクールソーシャルワーカー

2026年 東北医科薬科大学医学部 非常勤講師

【社会貢献活動等】

2015年 若林区地域ケア会議・若林区自立支援協議会 委員(~現在)

2016年 仙台市精神保健福祉審議会 委員(~2025年3月まで)

2018年 仙台市自立支援協議会 委員(~現在)

2018年 宮城県障害者施策推進協議会 委員(~現在)

2020年 仙台市障害者支援区分判定等審査会 委員(令和3年3月まで)

2020年 文部科学省課題解決型高度医療人材育成プログラム             

東京大学TICPOC D-1コース(ピアサポートワーカー育成)アドバイザー(~現在)

2022年 オープンスペースぽかぽか立ち上げ

【所属団体等】

・オープンスペースぽかぽか 代表

・仙台市精神保健福祉団体連絡協議会「ピアカウンセリング実行委員会」

・仙台スピーカーズビューロー(スピーカー)

・WRAP研究会inせんだい(WRAPファシリテーター)

・公益社団法人日本精神保健福祉士協会

安保 寛明 先生

山形県立保健医療大学 教授 看護学科長

  

【学歴】

1999年 東京大学医学部健康科学・看護学科 卒業

2005年 同大学院医学系研究科博士課程修了、博士(保健学)

【職歴】

2006年~2010年 東北福祉大学健康科学部 講師

2010年~2015年 岩手晴和病院(現、未来の風せいわ病院)社会復帰支援室長

                     →これからの暮らし支援部副部長

2015年~2024年 山形県立保健医療大学・看護学科 准教授→教授

2024年~    同大学 教授・学科長

【専門領域】

・精神保健学

・精神看護学

【主な役職】

・欧州精神医学会自殺対策委員会 委員

・日本精神衛生学会 理事

・日本精神障害者リハビリテーション学会 理事

・日本精神保健看護学会 理事長(2023年5月まで)